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クライアントアラート

EU企業結合ルールへの抜本的な変革 ―欧州委員会への追加照会制度と外国補助金受益者の届出・承認取得義務

June 08, 2021

By 新井 敏之

今年、2014年より欧州委員会(European Commission)の競争委員会長官で、2019年より同委員会副委員長を務めるマルグレーテ・ベスタガー氏の下、注目すべき競争規制制度の改革が企図されている。本稿ではそれらのうち、(1) 2021年3月26日に公表された欧州連合合併規則 (EUMR)第22条の適用に関する新たなガイダンスと、(2) 2021年5月5日に公表されたEU域外国の補助金 (foreign subsidies)に関する新しいEU規則を紹介する。

  1. 2021年3月26日に公表された欧州連合合併規則 (EUMR) 第22条の適用に関する新たなガイダンス

伝統的にEUでは、米反トラスト法(クレイトン法)に基づく届け出によって合併や支配取得に当たらない少数資本参加なども届出対象とする米国と異なり、合併または企業支配の取得を企業あるいは市場の「集中化 (concentration) 」として規制する。

2021年3月26日、欧州委員会は、法律家や企業関係者との協議を経ることなく、欧州連合合併規則 (EUMR)第22条の定める欧州委員会への照会メカニズムの適用に関する新たなガイダンス(以下「ガイダンス」)を公表した。

このアプローチの変更の意味合い:

  • 欧州およびEU加盟国(以下、「EU MS」)の国内基準値を満たさない「集中」でも、欧州委員会に照会することができる。22条の照会がEU加盟国による国内審査とも組み合わされることを考えると、これは「ワン・ストップ・ショッピングの原則」の終わりを意味する。

欧州委員会照会のための要件:

  • (i)EU MS間の貿易に影響を与え、(ii)要請したEU MSの領域内での競争に著しく影響を与える恐れがある市場の「集中」が発生すること
  • 1つ目の要件は、EU域内で国境を越えた活動を行っている企業だけでなく、「研究開発プロジェクト」や「知的財産権」が「EU域内の複数の国で商業化される可能性がある」企業も満たすことができる(ガイダンス、§14)。これらの基準は、かつてないほど広いものである。
  • 2つ目の要件を疎明するために、各国の競争当局は、歪みのリスクがあることを示すと考えられる一応の証拠 (prima facie evidence) を提出するだけでよい。関連する(網羅的ではない)考慮事項には、「関係する事業の1つの支配的な地位の創出又は強化、最近又は将来の参入者の排除又は2つの重要な革新者の合併を含む重要な競争力の排除、競争者の参入又は拡大をより困難にすること、供給又は市場へのアクセスを妨げることを含む競争者の競争能力及び/又は動機の低減、又は結束、組み合わせ、その他の排除的慣行により、ある市場から別の市場へ強力な市場地位を活用する能力及び動機」が含まれる。(ガイダンス、§15)
  • また、欧州委員会は、「関係する事業のうち少なくとも1社の売上高が、その実際の競争力または将来の競争力を反映していない場合」など、他の要因も考慮する。これには、例えば、次のような場合が含まれる:(1)大きな競争力を持つ新興企業や最近参入した企業で、まだ大きな収益を生み出すビジネスモデルを開発・実施していない(または、そのようなビジネスモデルを実施する初期段階にある)、(2)重要なイノベーターである、または潜在的に重要な研究を行っている、(3)実際にまたは潜在的に重要な競争力を持っている、(4)競争上重要な資産(例えば、原材料、インフラ、データ、知的財産権など)にアクセスできる、(5)他の産業にとって重要なインプット・コンポーネントである製品やサービスを提供している、など。評価において、欧州委員会は、売却価格が対象企業の現在の売上高に比べて特に高いかどうかを考慮することもできる」(ガイダンス、§19)。
  • 欧州委員会が言うように、この「純粋に例示的なリスト」は、市場占有率のテスト(支配力の基準)と取引価格のテスト(対価の価値)を組み合わせた新型のものであり、より広範に、EUMRには現存しない条件を追加しているように思われ、それに異議を唱えられる可能性がある。

欧州委員会への照会権者:

  • EU及びEEAの国内競争当局。欧州委員会は、国内競争当局に照会を依頼することもできる(ガイダンス、§26)。
  • 各国競争当局と欧州委員会は、「案件を照会するかどうか、または照会を受け入れるかどうかを決定する上で、それぞれかなりの裁量権を保持している」(ガイダンス、§14)。これは本件改正のより精緻に反競争的取引を探査するという本質を言い当てている。
  • また、英国がBrexitした後ではあるが、取引当事者が「自発的に名乗り出る」ことを奨励するという英国の自発的な制度を模倣している(ガイダンス、§24)。

買収取引への実務的影響:

  • 照会請求は、M&A取引に大幅な遅れをもたらす。照会手続きには、合計で40営業日かかることもある。企業は、契約中の停止条件の作成や交渉、計画プロセスにおいて、このことを考慮しなければならない。40営業日が経過しても欧州委員会が決定を下さない場合、欧州委員会は「集中を審査する決定を採択したものとみなす」(ガイダンス、§26-30)とされている。
  • また、欧州委員会は、この制度を第三者が照会により益するために利用できることを明らかにしている(ガイダンス、§25)。いわば競争者が買収を阻止するために紹介する手段である。この申立ては増加するだろう。

介入のタイムフレーム

  • 介入のための明確なタイムフレームは定められておらず、欧州委員会は「集中」が公開されていることを前提に、「集中の実施後6か月以上経過している場合には、一般的に照会は適当ではない」としている。(ガイダンス、§21)。しかし、「例外的な状況」(ガイダンス、§21)では、より遅い時期に照会を行うこともできる。
  • クロージングの前に、欧州委員会が合併当事者に照会要求がなされたことを通知した場合、取引停止義務が発効し、その後欧州委員会が集中排除の審査をしないことを決定した場合にのみ、取引停止義務が解消される(ガイダンス、§31)。

特定のセクターを念頭に置いているか

  • ガイダンスは、すべての分野に区別なく適用されるが(ガイダンス、§20)、医薬品とハイテク分野は明らかに関心が高い。

比較法的見解

  • この新しいアプローチについて、EUのシステムを米国のシステムに近づけるものだという意見もある。米国では、独占禁止法の執行者は、ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法 (HSR法。アメリカの連邦反トラスト法のひとつ)に基づいて審査された案件や報告基準を下回った案件でも、競争の阻害につながったと信じるに足る理由があれば、審査する権限を有している。しかし、大きな違いがある。すなわち、これらの「完了後」の係争は米国の連邦裁判所でなされる必要があり、当事者には重要な手続保証が与えられている点である。

結論:

  • 効果的でわかりやすい(と賞賛されている)システムから、欧州委員会は、①スペインとポルトガルの市場テスト、②ドイツとオーストリアの対価テスト、③イギリスの自主的なシステムなど、それぞれの各国制度の問題のある部分を採択することで、不確実性を生み出している。明らかに法的な課題も増えてくると考えられる。
  1. EU域外国の補助金制度の受益者に関する新しいEU規則(外国補助金規則)

2021年5月5日に発表された、「外国からの補助金」(広義にはEU域外の政府から与えられる選択的な経済的利益)によってEU市場に生じる「歪み」に対処するための新しいEU規則が提案された。 この新規則は、2021年末までに採択され、2022年に施行される予定である。

同規制により、非EU政府から補助金を受けているEU企業を含む多国籍企業にとって、コンプライアンス上の負担は多大なものになると考えられる。 「外国補助金」の概念は、EU法で確立された「国家補助」の概念と一致し、何十年にもわたって行われてきた判決や判例によって議論されてきた微妙なニュアンスを含む、複雑なものとなっている。

規制の概要

  • 新規則は、EU域内で収益を上げている多国籍企業が、EU域外の公的機関から外国の補助金を受けている場合に適用される、欧州委員会による監視、強制のメカニズムを定めており、場合によっては、収益や過去3年間に受けた外国の補助金の額に基準値を設けている。 違反した場合は重い罰金が科せられる。 新規則の対象となるのは、多国籍企業が行う経済活動の広範な範囲を網羅する3つのケースである:
  1. 欧州委員会が、随時、自らの問題意識によって、EUで事業を行っている多国籍企業に外国の補助金が付与されており、そのような補助金がEU市場での競争に明らかに歪んだ影響を与えていると信じるに足る理由がある場合
  2. 企業がM&A取引(合弁企業を含む対象企業の単独または共同支配権の取得)を行おうとする場合であって、(i)提案されている取引の当事者(グループレベルでは、EUの法律用語で「企業(undertaking)」と呼ばれるもの)のいずれかが、EU域内での活動で活発な存在であり(EU域内で5億ユーロ以上の収益を上げている)、かつ、(ii)その当事者(グループ)が過去3年間にEU域外の公的機関から累積で5,000万ユーロ以上の補助金を受けていることを条件とする。
  3. 企業がEU域内の2億5千万ユーロ以上の公共調達手続きに入札し、グループレベルで外国からの補助金を、それがどのようなものであれ受けている(またはその主要なサプライヤーや下請け業者が受けている)場合。

パンドラの箱:新規則は、EUの取引慣行を、予想外の方法で破壊する可能性がある

  • この新規則が施行されると、多国籍企業がEU以外の政府から補助金を受けている場合、EUでのビジネスのやり方にかなりの壊滅的な影響を与えることになる。 まず日々の事業運営(調査義務)や公共調達の入札プロセス(法令遵守)に関しては、コンプライアンス上のリスクがある。 しかし、最も重要であり、最も変動するリスクは、M&A取引の分野である。これは、上述した既存の手続きと並行して実施される新しい合併承認手続きが創設されるためでもある。
  • 新規則が採択されると、EUでは、買収が3つの独立した異なる承認シナリオを生み出す。(i)新規則に基づく欧州委員会の承認、(ii)既存のEU合併規則n°139/2004に基づく欧州委員会による通知と承認、及び、(iii)一定の場合(安全保障と公序良俗の基準)には、外国直接投資(FDI)規則に基づくEU加盟国当局への通知(最近のEU規則をもとに欧州委員会が調整を行う)
  • 新規則では、世界のどこにも相当するものがない2つの基準を導入することで、合併規制の要素がかなり複雑になる。

まず、関係者のうち少なくとも1社がグループレベルでEU内に「設立」されており、EU内での総収入が5億ユーロを超えていること。

第二に、過去3年間に、関係する様々な企業(購入者、グループ、ターゲット)が、あらゆる性質のEU以外の公的機関(SOEを含む)から、少なくとも5,000万ユーロの補助金(選択的に与えられる対価のない経済的利益)を受けていること。

2つ目の基準については、関係企業は、そのグループの関連会社が世界中の非EU公的機関から受け取った補助金について、3年間の正確なスコアカードを作成する必要が生じる。

  • 経験的には、これらの基準値を満たす中国、米国、EUの多国籍企業は数多く存在する。 新規則に定められた通りに規制が発効すると、要件を満たす多国籍企業は、大小にかかわらず、世界中のどこかで実現するすべての買収について、完了前に届け出て許可を得ることが必要となり、これに違反した場合には罰金が科せられ、欧州委員会による摘発の対象となる。
  • 新規則の基準値の技術的な不備は、対象企業の規模や事業を行っている場所に関係なく、買収者だけで基準値を満たすことにある。例えば、中国の多国籍企業が中国の辺地にある中小企業を買収しても、その多国籍企業がグループとしてEUに拠点を持ち、必要な量のEUの収入を生み出し、基準値を超える外国の補助金を受け取っていれば、新規則の対象となる可能性がある。

このような異常な事態が法制化の過程で修正され、反復的で無益な通知を回避できることが期待されている。

外国補助金のリスト作成。概念の広さと対処法

  • 新規則は第2条において、「財政的貢献」の概念に基づく「補助金」の広範な定義を含んでいる。すなわち、「EU域外の公的機関が、選択的に企業に経済的価値を無対価で移転すること」である。
  • これには直接的な資金提供はもちろん(市場条件によらない)債務保証、民間投資家と同等の経済状況ではない公的機関が行う融資などが含まれる。
  • 欧州委員会は、新規則の説明書(「立法財務報告書」)の中で、「外国補助金」の概念が「EUの国家補助規則に類似した原則に基づいている」と説明している。
  • この原則は、数十年にわたるEUの判決実務と判例法によって洗練されたものであり、公的機関がビジネス上の利益を与えることになれば、その可能性は無限に広がるが、以下の基本的な構成要素に絞られる。
  1. 対価を伴わない経済優位性を与えること(対価を伴う公共財・財産またはサービスの移転の場合を含むが、対価が市場価格を下回っているため、報酬を伴わない経済的優位性の「デルタ」が生じている場合。)、
  2. あらゆる公的機関または公的に管理された機関によって、またはそれらの機関の援助によって付与されたものであること。ただし、付与当事者はEUの公的機関(中央政府、地方政府、さらには国有企業)ではなく、経済優位性が彼らの犠牲を伴っていること、
  3. 選択的な性質を持ち、限られた数の受益者または指定された産業のみに優位性が付与されること。
  • このように多くの変数が存在するため、数百の子会社や支店を持つ多国籍企業がEU以外の国で公的補助金を受領する可能性はほぼ無限にある。
  • 多国籍企業はこの概念にどのように対処すればよいか。 EUの国家補助概念の複雑さを理解する専門家が、EU以外の国のグループ全体を綿密に監査することで、受け取った補助金のリストを確立し、一度確立したリストを常時更新していくことができる。

域外への影響だけではなく、 EUの多国籍企業もこの新規制に懸念を有する。

  • 新規則は規制・執行において、前例のない域外適用の範囲を持っている。 さらに驚くべきことに、欧州委員会は立入調査などの広範な執行権限をEU域外でも行使することを提案しているが、それはホスト国政府と対象となる多国籍企業が事前に同意している場合に限られる。 この域外適用の範囲は、EUの多国籍企業がEU以外の公的機関から補助金を受けている場合には、EU域外で事業活動について適用される。

新規制の核心的ターゲット。中国・米国の補助金

  • 欧州委員会は、グローバル・トレード・アラート(GTA)が記録したデータに依拠して、提案の発端となった公的補助金の数字(委員会が「過小評価されている」と考えている数字)を吟味した。欧州委員会によると、2020年末の時点で、EUの上位5つの貿易相手国(中国、米国、英国、ロシア、スイス)だけで、約1,724件、総額約5,420億ユーロの補助金措置が存在するとされる(そのうち約99%は中国と米国が付与している)。

欧州委員会は、外国の補助金に関する情報を得るために、EU域外の市場を監視する新たな権限を行使する予定。

  • 欧州委員会は2022年から、新規則の施行のために145人の専任DG Comp(欧州委員会の競争総局)職員を新たに採用する予定(現在、ブリュッセルには約800人のDG Comp職員がいる)。
  • 世界中で供与されている外国の補助金を監視するために、特定の監視部門が設置されることが予想される。 戦略に長けた多国籍企業は、自らの監視方法を導入し、競合他社に与えられた外国の補助金に関する情報を欧州委員会に送信することで、競合他社(EU、非EUの競合他社を問わず)を攻撃することができる。

外国補助金の受益者は、調査にさらされ、違反した場合には厳しい制裁金が課せられる。

  •  これまでの 国家補助に関するEUの規則は、手続き上の問題として、企業そのものではなく、EU加盟国に向けられている。これに対して、 新規則は、この点で画期的で、外国政府ではなく、直接企業に向けられたものである。 欧州委員会は、反競争的なカルテルの疑いに対して持っている広大な調査権限を、外国の補助金の分野にも準用する。これには、IT専門家を含む欧州委員会の職員チームが予告なしに企業を訪問し、特に企業のITシステムにある情報を使って証拠を探すために現地調査を行う、いわゆる「明け方の突発的捜索」(”dawn raid”) を行う権限も含まれる。
  • 違反した企業、あるいは不正確または不完全な情報を提供した企業は、年間総収入の1%を上限とする行政罰金(グループ全体のレベルで計算)と、定期的な非遵守罰則の支払い(グループレベルで日々の収入の5%を上限とする)を受けることになる。

外国補助金の受益者は、返済も含めた確約や制約的措置のリスクにさらされる。

  • 外国の補助金に関する正式な調査の後、欧州委員会は決定を下す。 是正確約命令や是正措置要求(補助金返済命令にまで至ることもある)を出すためには、欧州委員会は以下を証明しなければならない:
  1. 受益者に帰属する外国の補助金の存在、
  2. 直接的な結果としてのEU市場での競争への影響、
  3. 「関連する経済活動の発展についての積極的効果」(”positive effects on the development of the relevant economic activity”)が不在なこと。
  • 三つ目の要件は、欧州委員会に潜在的な案件評価の認定においてかなりの自由度を与えている。 欧州委員会は、取引後の売却命令を含む救済措置を命じる権限を持ち、また、M&A取引に関連して外国の補助金が交付された場合には、その取引の解除を命じる権限を持つ。

制定への手続き

  • この規則案は現在、8週間にわたって関係者全員からのフィードバックとコメントを募集している(多国籍企業とその弁護士は自由に意見を述べることができ(欧州委員会はこれを公表することができる)、一部の企業はコメントを用意するだろう)。 新規則は、EU加盟国の理事会と欧州議会で同一の条件で承認される必要がある。 政治的背景を考慮すると、新規則が2021年末または2022年初頭に制定されるように、両立法機関の間で迅速な方法で提案に関する合意が得られる可能性が高い。現在の新規則は、発効後6ヵ月以降、多国籍企業に直接適用されることを規定している。

ポールヘイスティングスからのアドバイス : 外国補助金スコアカードの作成

  • EU域内でビジネスを展開する多国籍企業が、EU域外の政府から付与された補助金の恩恵を受けている可能性は多々あり、その結果として課されるコンプライアンス上の負担に備えるための時間はほとんどない。
  • 我々の提案は、新しいコンプライアンスの方法と手順を定めることである。 その第一歩として、企業はグループ全体で「外国補助金スコアカード」を作成することが有意義である。 スコアカードを作成するためには、EU国家補助法の専門家の協力を得て、グループ全体の公的機関(地方自治体や政府系企業も含む)とのすべての取引に関する監査を実施し、新規則の下で外国補助金とみなされる可能性のある、対価のない選択的な経済的利益を特定し、定量化する必要がある。
  • もう一つの推奨事項は、特にM&A取引と公共調達の入札に関するものである。我々は、全てのデューデリジェンス依頼の中に、EU域外で受けた外国からの補助金に関するターゲットへの具体的な質問を行うことを推奨する。

新規則とWTOの補助金交付規則との関係

  • 新規則は世界貿易機関(WTO)の規則との関係に整理が必要である(多くの多国籍企業がこの質問をする)。なぜなら、外国の補助金の話題は伝統的にWTOの文脈に関連しており、EUだけに関連するものではないからである(加盟国の公的機関が与える国家補助に関する特別なEU規則を除く)。
  • 欧州委員会によれば、新規則は「EUの通商政策と整合的であり、既存の(WTOの)通商手段を補完するもの」であるとしている。しかし新規則は、概念としての「補助金」の定義と、違反した場合の救済措置の両方において、既存のWTOおよびEUの文書とはまるで異なっている。
  • すなわち、新しいEUの「外国補助金」の広範な定義は、すでに詳細に説明したとおりで、より制限的なWTOの概念とは異なる。 そして、救済措置については、新規則は新しい概念を提示している。
  • 通常、WTOの補助金事件に対しては、長く手間のかかる手続きの末に、被害を受けたWTO加盟国が救済措置として追加の輸入関税を課すことを認めるという形で解決される。 さらに、WTOの救済措置は、(商品ではなく)サービスの輸出が当該補助金によって支援されている場合には適用されない。
新規則は、この点で全く新しい施策であることを意味する。 多国籍企業は、WTO規則などの既存の規則に注意を払いながらも、EUの新しい概念や手続きに対応し、別途それを遵守しなければならないのである。

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Image: 新井 敏之
新井 敏之

弁護士・東京事務所代表